クランク長は170?165?172.5?……ギア比0.78のロードバイクでヒルクライム
Posted on Wed 23 September 2020 ( 2020-10-07 update ) in bike
クランクを短くすればケイデンスがあがる
「105、Ultegraにコンポを交換したい」、「TCR ADVANCEDをR7000系105で11速化」とコンポーネントのアップグレードを続けてきた。1年くらい経過して改善すべき点を見つけられたように思うのでそのお話。
我が家のGIANT TCR Advanced 3は、4600系TiagraからR7000系105に交換。ふにゃふにゃとしたクランクの感触がシャキッとして非常に走りやすくなりました。自転車との一体感がアップ。コンポの違いってあるものだなあって実感しました。
このコンポ交換のポイントはクランクの長さ。
前々から短めのクランクはペダリングがスムーズになってケイデンスアップ。長距離を走るにも良いといろいろなインターネット上の情報に基づいて決めました。結果は目論見どおりにケイデンスがアップ。ペダリングのスムーズさがたしかに向上したと思います。
でも、デメリットもあります。クランクを交換してから約1年。そのデメリットが顕在化してきました。
一緒にサイクリングに行ってくれる先輩たちに「ヒルクライムブーム」が訪れています。はじめはアルミの入門用ロードバイクで多摩川走ってきたーと報告しあっていたのに、いまではS-Worksのバイクがーとかカーボンホイール欲しいーと語りあうようになり、実際に購入に至ってます。おじさんの財力は恐ろしい。完全に機材沼に沈んだようです。
沼はともかく、おじさんライダーでのブームは断然「ヒルクライム」なのです。
思うに短いクランクアームとヒルクライムは相性が悪い。もちろん多少の傾斜ならその軽快なケイデンスでクルクルとパスすることができます。しかし、坂の斜度が上がってくるとそのケイデンスも落ちていき、最後は体重をかけてグイッグイッと登って行くことになります。このパワーをかけてクランクを回すのに梃子が効かないショートクランクは不利となります。
プロのロードレース選手の身長とクランク長を見ていると170mmは長いだろうって考えていました。「クリス・フルーム選手が身長185cmでクランク長175mm」、「ヴィンチェンツォ・ニバリ選手が身長181cmでクランク長172.5mm」って聞きます。身長173cmなら165mmくらいでしょ?って判断したんです。日本人は脚の長さが短いですし。
でも、この1年。あきらかに登りが大変になりました。踏み込んでも力が入らない。かなり前に身体を持っていって体重をかけないとダメなんです。それでもグイッって感じが物足りない。どうやら、いまのサイクリングスタイルにこのクランク長はあっていないのではと考えるに至りました。
クランク長を短くすればいいのか?
完成車に設定されていたのは4600系Tiagraの170mmクランク。これをR7000系105の165mmクランクにしましたが、この5mmが意外にもヒルクライムの負担になってきました。直径にして10mm変わるだけと考えるのか、10mmも変わると考えるのか。やはり170mmなのかな?
それと、身長の10%と言う一般的な目安が真実なら172.5mmでも大丈夫。となると選択肢は170mm、165mm、172.5mmまで広がります。
歴代の自転車で実際に乗ってみたクランク長を振り返りますとCannondaleのMTBは175mm。GIOSのミニベロは165mm。あさひの折りたたみ自転車に至っては160mm以下でした。MTBに乗ってると175mmってそれほど違和感がない。ケイデンスを意識してというよりトルクをどのようにかけるかってイメージの方が強いのでコントロールしやすいかどうかのが大事に考えてました。すると175mmも選択肢にしてもいい?
クランク長について頭の中を整理します。
170mmクランク。ロードバイクの完成車を購入したらほぼ間違いなくついてくる長さ。170cm付近の身長ならほぼ問題なく使いこなせるであろう数字。可もなく不可もなくといってよく、ふつーという感じ。
165mmクランク。ペダリングのしやすさをはっきりと実感できる。長い時間くるくると回し続けるにはとても便利だろうと感じる。170mmよりも自然にケイデンスがあがってくるのがわかる。
175mmクランク。MTB完成車で採用されていることも少なくない。単純に回転させるだけではなく、自転車をコントロールするパーツとして適切な長さと感じる。
172.5mmクランク。使ったことがない。でも「ふつー」の170mmとトルクのかけやすい175mmの中間ならバランスが良さそう。ロードレース志向ではなく、ロングライドやゆったりとヒルクライムするなら悪くないのでは?そもそも身長の10%ならばここが適切。
なるほど。さすがにロードバイクに175mmはやりすぎると思うので172.5mmを使ってみたらどうだろう。そう考えるに至りました。
ヒルクライムとロングライドを両立したい
まずロードレースは考えていません。ロードレースが開催される日程でお休み取れませんし、あまり興味も持っていない。ならば、いろいろ常識的な部分はおいておき、自分の乗りたい方向性にあわせて考えるようにします。
クランクを交換するにあたり、候補に考えたのはFC-R8000かFC-R7000のコンパクトクランク50T/34Tの172.5mm。すでに105は使っているしアルテグラのクランクがいいのかなとおぼろげに考えましたが、ギア比を再考するならもう少し小さいものを選んでもいいかもしれない。
繰り返しになりますがロードレースはしません。セミコンパクトなんて選ぼうと思いません。シクロクロス用のチェーンリングサイズの方がよっぽど好み。そんなニーズにぴったりなのが発売されています。GRXです。
FC-RX600-11なら46/30T。FC-RX810-2なら48/31T。違いは2ピースクランクとホローテックIIの違い。重量で100gくらいの違いと剛性の違いがあります。
アルテグラグレードにするならFC-RX810-2がいいかな。FC-RX810-2にすると3.4mmほど外側にチェーンラインがオフセットされます。太いタイヤに対応するためですが、マウンテンバイク乗りとしては気になる差ではない。R7000のフロントディレーラーもそれくらいの差なら対応できるでしょう。
それと、リアのディレーラーは11-34Tが公式の対応範囲だけれど、それ以上のカセットスプロケットはどこまで使用例があるのだろう?
調べてみると40Tは問題なく動いているみたい。となると、CS-M8000の11-40Tを購入すればいいのか。
となるとギア比は次のように変化する。
アウタートップ
50Tx11T=4.55 >> 48Tx11T=4.36
インナーロー
34Tx34T=1 >> 31Tx40T=0.78
のんびり走るならこれくらいの軽いギアがあってもいい。たぶんロードバイク一辺倒な人だとギア比が1を切ると進まない!ってなると思うけれど、マウンテンバイクに乗っているとあまり気にならなくて、なんならもっと軽いギアがあってもいいくらい。
たぶん、ロードバイクのフレームを使っているけれど、やっていることはグラベルロードあたりに求められているギア比をやろうとしているんだろう……。もっと直接的な表現をするならロードバイクのフレームにMTBコンポを導入しているようなものかもしれない。
とりあえずヒルクライムやる気が少しは湧いてくる。
ギア比4.36から0.78で敬老ギア
いつものようにヤマモトサイクルさんに相談にいくことにする。ロードバイク一辺倒じゃないだけにこうしたニーズにも応えてもらえるのでありがたい。
コンパクトクランクをGRXのクランクにしてもいいもんですか?
RX810の31TとRX600の30Tで違うもんですか?
175mmはやりすぎだと思いますがヒルクライムを念頭に172.5mmはありですか?
R7000のリアディレーラーは40Tもいけちゃうってほんとですか?
そんな感じで妄想の検証をしていただきました。ありがたいありがたい。よし!と決意してパーツを発注。
世間ではコンパクトクランクのことを乙女ギアと揶揄したりもするわけですが、さすがにこのギア比ともなるとそんな可愛いものじゃない。衰えた筋力とかを補うためのものですから敬老ギアということでいいのかな。
ヤマモトサイクルさんに依頼してから2週間ほどでGRXのクランクとXTのカセットスプロケットが到着。さっそく取り付けていただき、翌日には奥多摩湖に向かったのでした。
以下、160kmほど走ってみてのインプレッションというか所感。
クランク長が165mmから172.5mmになったことについて
7.5mm伸ばしたということは回転する直径にして15mm、つまり1.5cm大きくなります。この変化について、回せるか回せないかでいったならもちろん回せます。
久しぶりのロングライドだったこともあり、やや疲れはしたものの違和感はなく、ケイデンスが極端に落ちることもなかったので、クランクを回せなかったということはなかったと思います。
コンパクトな回転運動ではなく、股関節やひざ関節を使って大きな運動を積極的にしたという表現でいいのかな。
それとクランク長が長くなったことにより、バイクコントロールが楽になったような感覚もありました。クランクを水平にした状態で、バイクの上で立ち上がるような動作をする時(ちょっとした段差をクリアする時とか)に交換前より扱いやすかったような気がしました。ひょっとしたらQファクターが変更になったからかな?安定感はとても上がった気がしました。
フロントチェーンリングが48Tと31Tになったことについて
多摩川沿いに奥多摩湖までいくような急峻な斜面のない緩やかな登りにおいては、ほぼアウターチェーンリングのみで走れます。もちろんリアのカセットスプロケットのギアレンジも重要ですがインナーに切り替えたのは小河内ダムそばの青梅街道だけでした。
インナーチェーンリングは大きなカセットスプロケットを使用するデメリットがでて、トップ側3枚ほどが使用できませんでした。変速はしますがチェーンが長すぎてしまってディレーラーなど駆動部が干渉することになります。
ロングライドならワイドレシオなフロントシングルでも問題なさそうに感じます。軽量化を期待できる分メリットもあることでしょう。
アウターチェーンリングの状態で11Tから40Tまで使い、使い切ったらインナーチェーンリングに切り替えていくとちょうど良いイメージでした。
仮にフロントシングルならチェーンリングが42Tでリアが11Tから42T。トップもローもちょっと狭くなる感じですね。やはりフロントは2枚あったほうが便利なように感じます。
カセットスプロケット11-40Tについて
なかなか大きい。そして重い。まあ仕方ないです。フロントチェーンリングも小さくなったので、インナーローで3枚くらい余裕がでたように感じました。
グイグイと登るのではなく、高いケイデンスで、パワーより回転スピードで登るようにするとしっくりきました。なにしろケイデンスに対して進みませんからロードバイクにしか乗らない人には違和感があるでしょう。ゆっくりツーリングしたり、マウンテンバイクに乗る人なら特におかしなものではないはずです。とにかく楽チンになるので坂が嫌になりません。
あとは、チェーンが長くなったことにより、チェーンのテンションが少し気になります。路面の悪いところですとチェーンのバタつきが出てきます。スタビライザーがついたGRXのリアディレーラーならこのあたりが緩和されそうです。さすがに105では限界を感じてしまいますね。
いや、限界も何もメーカーの推奨値の外だった……。
敬老ギアの使い勝手
平地主体ならGRXのグループセットの構成でちょうど良いと思います。フロントが48T/31Tでリアが11T-34Tは奥多摩往復で欲しかったギアのど真ん中という感じです。リアを11-40tにするのはおそらく過剰装備ですね。
しかしながら、山岳主体にキャンプ装備満載でツーリングなんて用途ならば真価を発揮するものと思います。用途によっては非常にお勧めできます。敬老ギア万歳なはずです。
ふたたびパーツ交換するなら11T-40Tのカセットスプロケットをやめて11T-34Tに戻すかもしれません。とはいえ、しばらくはロングライド主体で走ると思いますし、ヒルクライムにも駆り出されるはずなので、この構成をもう少し煮詰めてみようと思います。結構、このあたりの試行錯誤って面白いですよね。